NAJC会長のメッセージ 2022年9月

ロリン・オイカ

サーリー・フュージョン・フェスティバルの日本・日系人パビリオンで、日系カナダ人の話を書いたバナーを熱心に眺めている女性がいました。このパビリオンは日系人コミュニティーと一緒に私が企画したものです。私はこの女性に、出品物はサーリー博物館の特別展示に使われたものだと説明しました。すると女性は「私はサーリーに長く住んでいますが、日系人の話を聞いたことがありませんでした。もっとたくさんの人が日系人の話を聞くべきです。」と答えました。私は女性に私もそう思う、実は私は日系四世でサーリーで育ったと伝えました。

この女性のコメントを聞いても、あなたは驚かないとおもいます。カナダの歴史の中で日系人の歴史は大きく欠落しています。この夏はお祭りや対面での集まりがいっぱいでした。そして秋にも続きます。それぞれのイベントは教育の機会です。私たちは日系人の歴史を共有することでこのギャップを埋めることができます。

私はサーリー博物館(MOS)館長と一緒に日系人の話を蒐集しました。また、今年の初めに博物館で開いた「守られなかった約束」展に合わせて、日系人に関する品物を集めて展示しました。「守られなかった約束」展は現在ビクトリアのロイヤルBC博物館で開かれています。カナダの他の都市にも行く予定です。

「守られなかった約束」展は日系カナダ人の資産の強制没収、売却を検証した「不正義の風景」プロジェクトの一環です。全カナダ日系人協会(NAJC)は「不正義の風景」プロジェクトのパートナーの一員でした。わたしはこのプロジェクトの運営委員会副委員長をしました。今年、私たちは最後の集まりを持ちました。NAJCは現在新しいプロジェクト「過去の誤りと将来の選択」のパートナーになっています。このプロジェクトは南北アメリカ、太平洋地域における日系人の強制移動、財産の没収、強制収容・監禁、国外追放に関する話を集めて、皆で共有しようという試みです。プロジェクトための会議が2022年9月に始まります。異なる国々の日本人の子孫が、日系カナダ人と同様な経験をしたのを聞くのは悲しいことですが、同時にこの人達に何が起こったのか興味があります。

1800年代から始まった日系カナダ人の歴史は、1942年の日系カナダ人の強制移動とともに、カナダの歴史から除去されてしまいました。2012年にBC州議会はBC政府が日系人に対して行った不正義を認めました。このことで日系カナダ人は新たにBC州政府が日系人排斥運動の共犯者であったこと、またこの排斥運動の結果、日系カナダ人の自由、人権、不動産、その他の持ち物、教育の機会、専門職になる機会が剥奪されたことを認識しました。また、家族が分離させられた人たちもいました。わたしは政治家にこのような不正義を正す有意義な処置がとられるべきだと話しました。

2018年に私はNAJC副会長でしたが、BC州首相ジョン・ホーガン、NAJC会長デービッド・ミツイ、BC州のNAJC加盟団体の会長との会合を用意しました。私たちはBC政府の誠意ある処置の必要性を強調し、全国の日系人コミュニティーでBCリドレスとコミュニティー・コンサルテーションの計画を実行に移しました。このBC州政府リドレス運動にはたくさんのボランティアが参加し、一般の日系人にはわからない舞台裏の作業もたくさんありました。そして、今年、BC州首相ジョン・ホーガンによる1億ドル基金設立の歴史的発表があり、NAJCはこの基金を使用して、日系カナダ人の歴史遺産を継承し、BC州政府による日系人迫害を経験した人たちに敬意を表し、日系人家族を大切にするための有意義な活動を続けていきます。現在、BC州政府リドレス委員会委員長のスザン・タバタがBC州政府が約束した基金を運営するための組織の設立準備をしています。

NAJCはカナダ・アングリカン教会ナカヤマ司祭によって被害を受けた人およびその子孫に対する有意義な活動を行います。私は2015年にカナダ・アングリカン教会の謝罪を獲得するための活動をしたグループの一員でした。昨年、カナダ・アングリカン教会は被害者のために、61万ドルの癒やし基金を設立しました。NAJCがこの基金の運営をします。この基金への応募は既に始まっています。そして、今秋から世代間トラウマと癒やしに関するワークショプが始まります。

2022年は1942年の日系カナダ人強制収容・監禁の80周年です。また、NAJC設立75周年です。NAJCは現在も日系カナダ人の家族の話を蒐集しています。NAJCは1947年9月にカナダ全国からの二世が集まった会議で、全カナダ日系市民協会(NJCCA)として始まりました。この時に全国に5つの州支部が生まれました。NJCCAの目的は、現在のNAJCも同じ目的を持っていますが、カナダ全国の日系人コミュニティーを強化し、人権を擁護する、特に人種的少数派とカナダ先住民を擁護することです。

9月には1942年にバンクーバーのヘイスティングス・パークに仮収容されたバンクーバー市以外からの人たちのことを思い起こしたいと思います。この人達は1942年3月からヘイスティングス・パークに到着し始め、9月1日までに3,866名に達しました。この時までに多くの人たちはヘイスティングス・パークからBC州内陸部の収容・監禁施設などに移動させられていました。1942年9月30日にヘイスティングス・パークは正式に閉鎖されました。しかし、ヘイスティングス・パークにあった病院は1943年3月まで開いていました。病院閉鎖後、病院職員と患者はニュー・デンバーの結核療養施設に移りました。

現在、ヘイスティングス・パークには、ここに日系カナダ人の仮収容施設があったことを示す4つの立て札があります。立て札にはここに収容された人による話が記載されています。新しく設立された「日系カナダ人ヘイスティングス・パーク案内センター協会(JCHPICS)」は日系カナダ人コミュニティーの活動を続けています。私はこの協会の次のプロジェクトであるヘイスティングス・パークに日系カナダ人の経験を知らせる案内センターの設立に参加します。このプロジェクトについてアイデアをお持ちの方は次に連絡をお願いします。bit.ly/Hastings-Park

今秋、NAJCは二つの大きなイベントに参加します。一つはNAJC ACE委員会が組織した芸‐美術シンポジウムです、もう一つはNAJC人権委員会がトロントのNAJC加盟団体と一緒に企画している人権問題シンポジウムです。NAJCはNAJC加盟団体のイベントを喜んで支援しています。

この数年、私たちは様々な試練に直面しました。コロナウィルスパンデミック、アジア系カナダ人人種差別、異常気象、経済問題などです。それにもかかわらずNAJC加盟団体と全国の日系人コミュニティーが弾力的に対応して活動を続けてきたのを見ていて頼もしく感じます。皆さん、ありがとうございます。また私個人として皆さまのNAJC全国理事会への支援に対してお礼申し上げます。私たちはまだまだ我慢の精神を発揮して、日系カナダ人の経験をもっと広くカナダ人に知ってもらい、私達日系カナダ人コミュニティーを強化すると同時に、外に開かれたものにし、公平なものする努力を続ける必要があります。

私はNAJC加盟団体の皆さまに、私がNAJC会長の職を全うさせていただいたことを感謝いたします。今年のNAJC年次総会をもちまして私のNAJC会長の任期が満了します。その後はNAJC全国理事会に前会長として参加します。NAJC全国理事会理事のレス・コジマ、ナオミ・カツミ、マリカ・オマツ、スザン・タバタ、ステファン・ハマデ、そしてNAJC専務理事ケビン・オカベら、皆様が注がれた時間と努力に感謝いたします。NAJC全国理事会はボランティアでそれぞれの経験、技術、能力を発揮して、NAJCおよび全国のNAJCメンバーにとってなにが最良なのかを考え活動しています。私は、引き続き、前会長として新理事会の活動を支援していきます。

NAJC全国理事会は、皆さまにとって安全で実り豊かな秋になりますよう願っています。

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