ロリン・オイカワ
5月はアジア文化遺産月間です。アジア諸国(東アジア、南アジア、西アジア、中央アジア、東南アジア)の文化を知るよい機会です。これらの地域には48の国があり、人種、文化、宗教、経済、政治制度、気候、歴史、食べ物が大きく異なります。そして、同じ国からカナダに移住して来た人たちでも、数世代にわたってカナダに住んでいる人と最近来たばかりの人たちでは違います。
アジア系カナダ人に共通の悲しい現実は人種差別を経験することです。コロナウィルス・パンデミックが始まるとヘートが急増しました。そして中国系、日系カナダ人などのアジア系カナダ人だけでなく、カナダ先住民の若い女性まで人種差別の憎悪の対象になりました。コロナウィルスを撒き散らしてカナダ人を殺しているから、「お前たちの国に帰れ」と命令されました。高齢の日系人女性がメトロ・バンクーバー地区で襲われました。彼女はまた過去の日系人に対する人種差別が始まったと思い、体の震えが止まらず、心が傷ついたと言っています。彼女はカナダで生まれました。1940年代に日系カナダ人が敵性外国人のレッテルを貼られ、強制的に移動させられ、資産を奪われ、収容所に監禁され、日本かロッキー山脈の東に追放された時は子どもでした。
アジア人種を差別の対象にするのは新しいことではありません。1907年にバンクーバーで起きた暴動で、暴徒はチャイナタウンに押しかけ、商店の窓を壊し品物を盗んでから、パウウェル街の日本人住居地に向かいました。暴徒がチャイナタウンに最初に行ったのは、チャイナタウンが、暴徒が集合したヘイスティング通りとメイン通りの角にあった昔の市庁舎前の広場の隣にあったからです。アジア系カナダ人は白人の仕事を奪い、白人の国カナダの脅威になるという醜い理屈が暴徒を煽りました。当時、米国ではすでにアジア人排斥運動が始まっていて、バンクーバーに「アジア人排斥同盟」が設立されるきっかけになりました。バンクーバー暴動の三日前にワシントン州ベリンガムで南アジア系アメリカ人に対する暴動があり、製材所で働いていた南アジア系アメリカ人はベリンガムの町から追放されました。
危機の時には社会の対応が問われます。恐怖を煽り立てて、特定のグループを糾弾する人が出てきます。私たちは自分たちの歴史的経験と社会の不正を学び、ヘートに対抗する力を付けなければなりません。不正が再び繰り返されないようにしなければなりません。人種差別に対抗して団結する中で、私たちはカナダ社会の多様性の美点に気づきます。多様性に基づいた、誰も排除しない社会を作り維持していくことで、私たちはカナダをより強い国にすることができます。
2022年5月2日にBC州政府は「反人種差別データ法」の発令式を行いました。この式に、NAJC会長ロリン・オイカワ、NAJC役員スザン・タバタ、グレーター・バンクーバー日系市民協会(GVJCCA)人権問題委員会ジュディ・ハナザワが他の団体の代表と一緒に参加しました。GVJCCはこの法令の公聴会に参加しました。そしてこの法令を評価します。NAJCは政府に人種に基づいたデータを蒐集することを要請する州政府と連邦政府の公聴会に参加しました。人種に基づいたデータは、制度的な人種差別と人種間不平等の解消に役立ちます。NAJCはBC州の反人種差別データ法が人種差別の実態に基づいた政策決定への第一歩になると期待しています。そして、これが他の州も同様な法令を策定する刺激になることを願っています。
5月27日に「移民と復元力」の試写会があります。これは記録映画「ブリティッシュ・コロンビア、知られざる歴史」のエピソードの一つです。この記録映画には日系カナダ人の歴史と1907年の反アジア暴動が物語のハイライトとして入っています。試写会の特別ゲストは教育者・作家のマサコ・フカワと、この記録映画の監督ケビン・イーストウッドです。試写の後で監督との質疑応答の時間があります。試写は太平洋時間午後6時(マウンテンタイム午後7時、セントラルタイム午後8時、イースタンタイム午後9時、大西洋タイム午後10時)開始です。予め登録が必要です。https://bit.ly/BCUntoldDoc
今年は日系カナダ人の強制移動80周年、NAJC設立75周年です。NAJCは引き続き日系カナダ人の経験談を集めています。NAJC会長を努めたテルミ・クワダの経験談がNAJCウェブサイトとソーシャルメディアに掲載されています。また、テルミの父の道路建設現場と芝居をした時の写真も載っています。彼女の経験談と写真は次のリンクを参照してください。 https://najc.ca/terumi-kuwada-shares-her-family-story/
あなたのご家族が1942年に何をしていたか、NAJCの活動に参加したことはあるか、1947年以降どうしたか、などに関するあなたのお考え、経験談、そして写真をNAJCにお送りください。[email protected]
5月13日は日系人の最初の一団がBC州内陸部のゴーストタウンのキャスローに到着した記念日です。キャスローはブリティッシュ・コロンビア州治安委員会が日系人を収容するためにBC州内陸部に作った2番目の収容施設です。日系人はクーテネイ湖を外輪船SS(船尾駆動の蒸気船)ナソキンで渡ってキャスローに到着しました。キャスローの日系人は500人から1,200人まで増加しました。このうち、78人は1890年代に建てられたランガム・ホテルに収容されました。このホテルは現在も公共の美術遺産センターと日系カナダ人博物館として使用されています。
来月も幾つかのイベントを予定しています。6月25日には「日系カナダ人のためのアングリカン教会癒やし基金」のオンライン支援会合があります。NAJCのニュースやイベントを知るためにはNAJC電子ニュースが便利です。ここからお申し込みください。https://najc.ca/subscribe/
5月21日にBC州政府が日系カナダ人社会に大切な発表をします。
全国理事会は皆様が大切なお母さんと「母の日」を過ごすことが出来たことを願っています。私たちは母と、母に代わって母の役割を担った方に感謝いたします。特に80周年を迎える日系人の強制移動を、経験された母、祖母の皆様に思いをはせます。多くの方は既にお亡くなりになっています。この方たちの力と決断力のおかげで現在の私達があります。私達はこの方達の経験談を私達の心の糧にしたいと思います。この方たちの愛はいつでも私達と一緒に、私達の思い出の中に、私達の心の中にあります。