ブリティッシュ・コロンビア州が過去に日系カナダ人を不正に扱ったことを認める第一歩を踏み出す

ブリティッシュ・コロンビア(以下、BC)州政府は「日系シニアズ住宅ヘルスケア協会(the Nikkei Seniors Health Care and Housing Society、NSHCHS)」に200万ドルを提供します。これは第二次世界大戦中にほぼ22,000人の日系カナダ人が強制収容によって被った精神的苦痛を忘れないようにするためのBC州政府の約束を示す一つです。

BC州政府人種差別対抗活動担当の議会事務局長であるラクーナ・シンは次のように述べました。「BC州政府は第二次世界大戦中に日系カナダ人が被った不正に政府が関与していたことを認める。この最初の支援金は日系カナダ人社会が被った心的外傷が継続していることを認めるための第一歩である。われわれはこれから一年の間、全カナダ日系人協会と協力して、2022年以降にどのように日系カナダ人の被った苦難の歴史を認識していく機会を作っていくか検討する。」

NSHCHSはこの200万ドルを日系カナダ人の収容施設経験生存者の健康と福祉のためのプログラムを開発してサービスを提供するために用います。NSHCHSは全カナダ日系人協会(NAJC)と協力して、NSHCHS以外の日系人組織で収容施設経験生存者を支援している組織にも資金を提供します。

「1940年代に数千人の日系カナダ人が被ったひどい損失は、今日でもコミュニティに影響を与えており、多くの人が永続的な健康問題とトラウマを経験しています」と保健大臣のエイドリアン・ディックスは述べています。 「この資金は、抑留された生存者に切望されていた健康とウェルネスのサポートを提供し、彼らがコミュニティの他の人々とつながり、健康を維持し、今後数年間自立し続けるのを助けます。」

この資金は、これらのセンターが支援された自立生活の高齢者や地域社会のためのプログラミングを強化するのに役立ちます。これには、認知症やパーキンソン病の患者へのサポート、現在の問題や懸念についてのコミュニティトーク、高齢者の健康と健康を維持するための運動クラスが含まれます。

「トラウマは世代に影響を及ぼします。私たちは何度も何度も見ています」と、高齢者サービスおよび長期ケア担当国会議員のマーブル・エルモアは述べています。 「だからこそ、今日はとても重要です。私たちは、現在高齢者である日系カナダ人の癒しと承認の旅に必要なステップを認識し、これらの歴史的な過ちを被った生存者への約束を確実に果たす必要があります。」

この基金はBC州司法省が、第2次世界大戦中の日系カナダ人強制収容の結果もたらされた心的障害を認めて、日系カナダ人コミュニティーに対する責任を表明する第一歩です。また、これはNAJCからの日系カナダ人強制収容経験の生存者に的を絞った政策が必要であるという勧告に対する回答です。

NAJC会長ロリン・オイカワ

「NAJCは日系カナダ人の歴史を保持し、皆に伝え、現在と将来の不正を阻止するための活動をしています。この活動の中で、過去の不正を経験した日系カナダ人の生存者のことをいつも気にかけています。この人達が過去において否定された支援と尊敬を私たちは回復します。」

NAJC・BC州リドレス委員会・委員長スザン・タバタ

「この基金をもとにして、NAJCはコミュニティパートナーと協力して、日系カナダ人シニアを支援するプログラムを続けます。世代間心的外傷への対応、認知症介護サービス、コミュニティー介護サービス、オンラインによるデジタル拠点、などの活動をCOVID-19環境を考慮に入れて行います。」

日系シニアズ住宅ヘルスケア協会・会長ルース・コールズ

「日系カナダ人シニアは苦難に満ちた経験をしているので、特別な支援が必要です。日系カナダ人シニアは、自宅から追い出され、収容所に隔離され、財産を没収されて強制的に売却され、BC州以外の土地に追放されました。このため、教育は中断され、友達と離別し、経済的に困窮し、健康に問題が生じ、恥辱を受けました。そして、これらの問題に解決がないままでした。

日系カナダ人シニア メアリー・キタガワ

「現在生存する日系人差別の経験者は、第2次世界大戦中はまだ子供でした。しかし、祖父母と両親の経験した苦難の歴史を担って生きてきました。」

日系シニアズ住宅ヘルスケア協会・前会長キャッシー・マキハラ

「この基金は緊急性の高いことに使用されなければなりません。基金は日系カナダ人コミュニティーが参加して運営するものですから、各地の日系カナダ人コミュニティーが特定した緊急性の高い活動に使われます。」


背景

2019年10月に発表されたNAJC報告書「ブリティッシュ・コロンビア州の日系カナダ人に対して行われた歴史的な不正行為を正すための勧告報告書、日系カナダ人社会の公聴会報告」からの抜粋

2012年5月7日に、BC州議会は次の動議を全会一致で可決した。「太平洋戦争中に連邦政府の戦時特別法の下に21,000名あまりの日系カナダ人がBC州内陸部の収容所に収監され、資産を没収されたことにBC州議会は謝罪する。日系カナダ人が日本人を祖先に持つというだけで差別されたことを深く後悔する。BC州は先祖のいかんにかかわらず、すべてのカナダ人を歓迎し、敬意を払う。」

この動議を可決したあとでBC州は動議の内容を具体化する施策はほとんど取らなかった。動議で一番重要なことは、BC州政府が誤りを犯したことについて言及しなかったことであった。

2018年4月19日にNAJCはBC州州政府に過去の州政府の過ちを正すための方法とその範囲を日系カナダ人社会と話し合うことを正式に要請した。2019年3月20日に州政府はNAJCと契約を結んだ。この契約はNAJCが日系カナダ人の公聴会を開き、州政府の2018年の謝罪を日系カナダ人社会にとって有意義にするために州政府がどのような活動をしたらよいかについて意見を集めて検討し、州政府に勧告案を提示するというものであった。

BC州政府の支援を得て、全カナダ日系人協会(NAJC)は大規模な公聴会を開いた。公聴会にはBC州の9箇所で行った日系カナダ人の公聴会、オンラインによる公聴会、オンライン調査、個人と団体からの書類による意見書がふくまれている。公聴会は2019年4月から9月に行われた。公聴会に参加した人は皆、次の質問に答えることを要請された。「あなたは日系カナダ人社会を壊滅させたBC州政府による人種差別と不正義な政策の歴史を正すために、BC州政府は何をすべきだとおもいますか?」

2019年10月、NAJCは公聴会に基づいた報告書、「BC州の日系カナダ人に対して行われた過去の不正をただすための勧告:公聴会報告」をBC州政府に提出した。上記のプレスレポートの内容はこの報告書に対するBC州政府の最初の回答である。

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